味覚

アメリカ人夫妻と食事をしたとき、奥さんが深刻な表情で「うちの主人はどんな料理にでも塩をふるんです」といい始めた。ご主人は「癖だからしょうがないだろう」と切り返すが、「味を確かめてからでもいいじゃない」と怒られてしまった。

実際、左手に食卓塩の小瓶を持ち、右手にフォークをもって食事しているアメリカ人をみかける。アメリカ人に人気の中華料理屋の味付けはライスにまぶさなければ食べられないほど塩辛い。アメリカ人は「お子様ランチ」のようにすべてのメニューを一皿に盛るのが普通だし、アメリカでは米は野菜の一種なので塩からい「たれ」がライスと混ざってちょうど良くなるのを前提にしてるのかなとも思う。

アメリカ人は中華レストランの「バッフエ」が大好きである。昼は7ドル、夜は10ドルぐらいで食べ放題にありつける。しかし中国人の姿はまばらだ。「あれを食えるのはアメリカ人とABCだけだよ」と上海からきた友人は苦笑する。

「ABC」とはアメリカ生まれの中国人2世のことである(American Born Chinese)。アメリカ人は「バナナ」といって揶揄することもある。顔(皮)は黄色いのに、心(実)は白人ということだ。

「本当の中華料理の食感や味付けが欲しいならチャイナタウンにいって、中国人がはいっていくレストランをみつけることだね」と彼はいう。

自宅近くの中華レストランでおいしいスープヌードルを見つけた。酢づけのキャベツが麺とうまくからみあい薄味のスープと絶妙なバランスをとっている。二日酔いの朝は這ってでもいって食べたくなる。何人ものアメリカ人の友人にも進めたが、かれらは口に運ぶや首をかしげ全員が「ノーティスト」といって塩をふりかけた。

アメリカのあちこちにテキサススタイルのバーベキューレストランがある。ここでスペアリブグリルを注文すると驚く。巨大な皿にのってるスペアリブが見えない。甘辛い濃厚なバーベキューソースが肉を厚く覆っているからだ。せっかくの肉をビーフシチューのようにソースにひたしてたべろと言うのだ。

こちらのボーリング場、スケート場、ファミリーレストランなどでは子供の誕生会が開かれる。日本人の子供も参加している。こちらの親たちは送迎だけだが、日本人の母親達は帰らず遠巻きにながめていることが多い。そのひとつの原因はパーティの終りごろに登場する市販の誕生ケーキである。こちらの市販ケーキは、どんなにうがいしても口に残るほど強烈に甘い。日本のケーキの味に慣れている子供は一口食べてフォークを置くが、こちらの生活の長い子供達は大きな塊をむしゃむしゃほおばる。日本人の母親たちにとっては気がきではないのだ。

最近、オバマ大統領夫人のつくる「ココアケーキレシピ」がインターネットで公開された。小麦粉140gに砂糖275g、バター110g、バターミルク180 cc、ココア50gだそうだ。「粉」以外の食材の分量を見ただけで僕は絶対に食べれそうにない。

「食文化から社会がわかる」という本が出版されている。面白そうだ。もしそれが本当ならば、米国社会の諸悪の根源はこの「甘辛文化」にあるのは間違いない。

rocketboy2 について

合成化学と薬化学と天然物化学を生業にし、それらを基盤にしたビジネスを展開している。
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