来年には没後30年を迎える開高健は数多くの名句、警句、冗句をその作品の中にちりばめており、「開高健・名言辞典」なる本まで出版されているほどだ。僕はその中でも「心に通ずる道は胃を通る」という言葉が気に入っている。人間のありようと食や酒の関係を鋭く見透した開高ならではの言葉だと思う。というわけで、まだ未読のグルメ本三冊を入手した。出張のお供が増えた。
あまり知られていないが、開高がこのように傑作食エッセイをたくさん残せたのは妻から離れたかったからだといわれている。もともと、子供ができたため、激しく結婚を迫られて結婚したということで、妻である詩人、牧洋子とはかなりの確執があったようだ。
それが開高を家庭に落ち着かせず、放浪の旅をさせる理由のひとつだったのかもしれない。開高が死ぬ間際、妻にかけた最期の言葉が「この鬼!」だったそうだからうかがい知れる。牧洋子が悪妻であったかどうかはわからないが、世の中には家庭に恵まれなかったことが「ばね」になって素晴らしい作品や発見をした作家や画家や科学者は少なくない。開高もその一人なのかもしれない。妻の牧洋子だけでなく、一人娘のエッセイスト、開高道子も父親とは微妙な関係であった。そして41歳の若さで鉄道自殺をとげている。開高の洒脱な文章の裏にある複雑な家族ドラマを思うとちょっと切なくなる。
はじめまして。
ヨーロッパの記事からたどり着き、ここ数年、お気に入りにしています。
とはいえ、ホームまでは拝見することなく過ごしていました。
ひょんなことから、ホームからこれまでの記事をちょくちょく読まさせていただいております。
とは言え、車関係の更新は2016年から、記事は本年1月から更新をされておられないご様子。
お身体の調子でも?と案じております。
環境が整いましたら更新があることを楽しみにしております。