孤独のグルメ30-2

イタリアではパンには「バター」ではなく、オリーブオイルにバルサミコ酢を入れたものをつけて食す事が多いことを初めて知ったのも「ビアンキ」だった。今から10年ほど前だ。この時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。

席に座ったとたん、注文もしていないのに、ウエイターが大降りの平皿をテーブルに置き、そこにオリーブオイルをかなりの高さから、手馴れた手つきで「だらだら」とたらし、その中に、真っ黒なバルサミコ酢をオリーブオイルの海に半分ほど注いだ。完全に分離している。

「何だこれは」と思ったが、正直なところ、恥ずかしくて聞くわけにいかなかった。しばらくしてパンのバスケットがテーブルに置かれた。一緒にいたスイスの友人が大きな手でパンをちぎると、酢とオイルを一切混ぜることもせず、分離したままの油の海に無造作にパンを浸して口に運んだのだ。驚いた。

これに似た食事のときの「カルチャーショック」はチャイナタウンで初めて中国の海鮮料理を目の前にしたときにも経験した。ボストンに来てすぐのころだった。知人に食事に招待された。まず最初に眼の前に出てきたのは、底が浅く丸く何ともゴージャスなスープ容器に入った茶色の暖かい液体であった。薄っすらと湯気がたち、花びらなんかも浮いている。

僕は本格海鮮など初めての経験。これは恐らく前菜スープなのだろうと思い、眼の前のスプーンで口へ運ぼうと思った瞬間、知人はこの小さなボールに指を浸して「チャパチャ」と洗い始めたのだ。「な、なにをしているの?」椅子から転げ落ちるほど驚いた。

間なしに僕らの前には、山盛りの蒸し上げた殻つきエビの大皿で置かれた。つまり、えびの殻を手でむくと「べたべた」するからこの水でで洗いなさいということだった。茶色い液体はウーロン茶なのだそうだ。いや飲まなくて良かった。

rocketboy2 について

合成化学と薬化学と天然物化学を生業にし、それらを基盤にしたビジネスを展開している。
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