愛なき世界

ローリが庭にでてみると、門のところに3人の老人が座っていた。

「どうなさいましたか?もしお疲れでしたら家でお茶でもいかがですか」ローリは声をかけた。

「ご家族のかたは全員おられますか」 一番元気そうな老人が尋ねた。

「いいえあいにく主人はまだ帰っておりませんが」

「奥さん。それでは我々はお招きにあずかるわけにはいかないのです」

その日の夕方、家族が全員そろって夕食を取っているとき、ローリは3人の不思議な老人の話を話題にした。

「もしまだ近くにいるのなら、夕食を一緒にと声をかけてあげたらどうだい」。夫のマイクの提案にローリは暮れなずむ庭にでた。するとまだ門の近くに3人の老人が座っていた。ローリは声をかけた。

「家族全員がそろいましたよ。さあ一緒に夕食でもいかがですか」すると老人がこんなことを言い始めた。

「奥さん。私の名前はlove(愛)といいます。ここにいるのはsuccess(成功)とmoney(金)です。お招きはたいへんうれしいのですが。私たち3人全員が招待されるわけにはいかないのです。どうか3人のうち誰を招待するか、ご家族と話しあって決めてください。」

 ローリは家に戻るとこの不思議な話を伝えた。

「僕はやっぱりsuccessさんがいいな。今やっている仕事が成功することが僕の夢だしそうすれば将来出世にもつながるからね」夫のマイクはこう言った。

「私はやっぱりmoneyだわ。お金があればなんでも買えるし。この家だって建て替えたいもの。お金がいいわ」と妻のローリが異論を唱えた。

そのとき、ひとり娘のキャシーが口を開いた。

「ママ。パパ。あたしはloveさんがいいわ。Loveさんがきてくれたらあたしパパとママをもっともっと大好きになると思うもの。」

 マイクとローリはこの娘の言葉にハッとしました。そして自分たちの欲求だけで判断しようとしていたことを後悔した。マイクはローリに目で合図を送りこういった。

「本当にそうだね。パパもママもキャシーの考えに大賛成だよ」「ママ。さあloveさんを夕食に招待しようよ」

ロ-リは3人の老人たちに声をかけた。

「皆で話し合ってloveさんを招待することに決めました。どうぞいらしてください」

ローリが老人の手をひいて家に入ろうとしたそのとき、残ったsuccess とmoneyも立ち上がり老人の洋服の端をつかみながらぞろぞろと歩きはじめた。ローリはびっくりして思わず尋ねた。

「ちょっと待ってくださいloveさん。ひとりだけ招待を受けるということだったので、私たちは家族で話しあってあなただけを招待したんですよ」。

loveという老人がくるりと振り返りにこにこしながら言った。

「奥さん。実はここにいる二人、successと moneyは目が不自由なんです。もしあなたがこの2人のうちどちらかを選んでいれば、私は片方の面倒をみながら一緒に生きていけたんです。まあそうなったらあなたがたご家族はたいへんだったでしょうがね。successも moneyも私なしではどこに行っていいものか皆目わからないんですから」と老人はローリーに向かって片目をつぶった。

「でも私を選んだからにはどうしてもこの2人を連れていかねばなりません。私がいないと彼ら二人では生きていけないんです」

老人はsuccessとmoneyの手をしっかり握りながらどんどん家の中へ入っていった。

これは米国のある小学校で使われた副教材の一部である。日本で言うところの現代版おとぎはなしだが、日本では決して語られない展開である。日米の「人生と金」に対する考え方の違いは案外子供の頃のこういう教育がボデイブローのように効いているのではないかと思う。(2004/2/26)

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