パリのアメリカ人

1920年代にパリに集まった外国の作家、画家を総称して「エコール・ド・パリ」(パリ派)という。その中には金ピカ主義のアメリカを捨て、パリに活動の場を移したヘミングウエー、フィッツジェラルド、T・S・エリオットなどのアメリカ人作家も多かった。ヘミングウェーをして″移動祝祭日″と驚嘆させた街、パリ。その自由な雰囲気の中でファッション、文学、映画、音楽などの魅力に触れ、生涯にわたって影響を受けた彼等のことをやがて「パリのアメリカ人」と呼ぶようになった。

さてそんな精神の首都パリにもう何回きただろう。だいたい3回目ぐらいから、僕には「パリのアメリカ人」をすぐ判別できるようになった。見分け方はいたって簡単。ほとんどアメリカ人観光客は肥満していて、服装がヤボツたいのである。もっともわかりやすいのは家族連れである。アメリカ人家族は乳児から老人まで一家そろって肥満しているのが特徴だ。4、5歳の肥満児をみるたびに、「いったいおまえら何食わせられてるの」と一人ごちる。

親の食文化が原因とすれば、その結果は子供達に他ならない。10日前オハイオの田舎町に滞在した私は愕然とした。見る人見る人肥満しているのだ。現在アメリカの肥満の割合は大人60%と子供30%といわれている。しかしこの田舎町にかぎっていえば、この数字はどう見ても低すぎるように思えた。街にはまともなレストランはなかった。ファミレスだけである。行列ができていたフライドチキンの店のメニューを見て驚いた。注文は最低10個から。メニューには100個までの値段がかかれてあった。いくらアメリカに寿司などの日本食が定着してきたといってもそれは一部の都会だけだ。「ビーフイーター」を自認するあのブッシュのように、中西部に住む多くのの米国人は生魚など見向きもしないのである。

長い間栄養学者の間で説明がつかなかったある事実をフレンチバラドックスという。
フランス人はアメリカ人とおなじように肉を好み高脂肪の食事をとるにもかかわらず、心臓病、高血圧、肥満の割合がアメリカと比べてきわめて低いという事実だ。疫学という広範な統計学的調査によってこの謎が解けたのは、いまからわずか10年前のことだ。

実はフランス人がアメリカ人と比べて50倍量の赤ワインを毎日飲みつづけているのが原因だったのである。たしかにパリには肥満している人が極端に少ない。まさに日本なみだ。私はこの10日間、米仏を間なしで訪問してフレンチバラドックスをこの日で確かめたことになる。

アメリカ人がいかに文化なき国民であるかを私に説いたのはフランス人の友人ジャンピエール。彼は30年間の滞米生活を通して「アメリカ人は衣食に金をかけなさ過ぎる」と断言する。たしかに使い捨て容器で短時間に食事をとるアメリカ食は彼から見ればおそまつの極致に映るにちがいない。

ちなみにオハイオの田舎の百個の手羽先は45ドル(4700円)。めちゃくちゃ安い。これをたべながらコーラを飲んでいたら太るなというほうが無理である。

セーヌ河の遊覧船から誰かれかまわず破顔一笑で手をふる。シャンゼリゼを短パンとスニーカーで闊歩する。有名なショー劇場のクレィジーホースの前にたむろして開演を待っている。「ここはジャケットがいるんだよ」と口まででかかる。ルーブル美術館では短パンに手をつっこみ「思ったより小さいんだなモナリザって」と大きな声で笑う。

全部最近のアメリカ人のことだ。その昔、物質至上主義を嫌いパリに居を移した誇り高き「パリのアメリカ人」。今はまったく違う侮蔑の意味をこめてささやかれているこの状況、パリのアメリカ人観光客はご存知なのだろうか。(2005/3/25)

 

 

 

 

 

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