飛べないコンドル

世界最大の猛禽類コンドルは翼を広げるとゆうに2mを超しその雄姿は陸鳥の王にふさわしい。ところが直径3-4mの円形のフエンスでま わりを囲うだけで彼等は飛び上がることができなくなってしまう。コンドルには飛ぶときに必ず2-3mの助走をつけるという習性がある。この習性が邪魔をし て彼らは囲いを飛びこすことができないのだ。ひとたび頭上をみあげればそこには自由な天空が広がっているというのに、あわれ陸鳥の王は一生その囲いの中で 囚われの身に甘んじる。試みることすらしないのだから情けない籠の鳥といえるかもしれない。

この話を笑いすごすことができるだろうか。 私たちのまわりにも実は同じような目に見えない囲いがある。組織内の規則や習慣がつくりあげる企業文化 が知らず知らずのうちに社員の思考や行動パターンを限定していく。どんなに自由な発想を求められてもいつも同じ思考過程を堂々めぐりして解決策を見出せず にいる自分にきづくこともある。まるでコンドルが天空を仰ぎ見てなす術がないのとよく似ているではないか。

加えて囲いの中にいることの 心地よさに気づいてしまうと、もう人は決してそこから出ようとはしなくなる。会社が大きくなればなるほど、成長すれば するほど社員の周りのそして彼らが所属する部署にある目に見えない囲いはより強固になり、行動や思考パターンはさらにぎこちなくなっていく。

某 フイルム会社が設立した米国ベンチャー運営のためにボストンに派遣されていた5年間、私の日課は日本の直属上司を説得するためのレポート書きで あった。上司を飛び越した提案をしたことで何度も手痛いしっぺ返しをされてきた私にはいつのまにか上司が目の前の囲いとなっていた。それをパスしなければ 一歩も前へ進めない。何ともやる瀬無い話だがこれが私のいた組織の現実だった。いわゆる「大企業病」である。これは企業を効率よく動かすために設けたシス テムがやがてグループメンバーの自由な発想や思考を奪い結果的にひどく非効率的な組織に陥らせる病気である。この病気は今まで多くの企業の息の根を止めて きた。

Unisys, Sperry, Wang, DECの名前をまだ覚えておられるだろうか。70年から80年にかけて世界を席捲した米国発のコンピューター会社である。ハードからソフトへの転身が図れ ずすべてあとかたもなく消え去った。Krege’s, Woolworth, Searsいずれも80年代に隆盛をきわめて米国の巨大デパートである。80年代後半に大量ディスカウント店、Home depotやWall martが出現した。同じものを売っても売り方ひとつで商品を差別化できるという“新ビジネスモデル”の出現に対応しきれなかった大企業はあっけなく滅ん でいった。

しかしこのサバイバルゲームの中で事業自体も硬直化し動きの鈍かったにもかかわらず滅びなかった巨大企業があった。GEとIBMである。

ジャッ クウエルチは80年代前半から20年間GEの会長を務めた。冷蔵庫から飛行機までつくるこの巨大企業の研究者達にあった縄張り意識を撤廃し 各部門のコミュニケーションの良化につとめた。その上で事業再編のために選択、集中、撤退を繰り返し行いGEにとって最適な分野を読み取りここまで利益率 の高い会社に成長させた。

ルイスガ-スナーは1993年から9年間IBMを率いた。彼はパソコンへのダウンサイジングに乗り遅れ瀕死の IBMを顧客のニーズや問題解決を主 体とするサービスカンパニーへと180度変身させた。将来のITビジネスを見据えたこの判断は正しかった。ガースナ-はソフト会社を何社も買収することで 企業文化を一気に変えサービスを中心とした総合E-ビジネスカンパニーへと変身させたのである。

GEとIBMが滅ばなかった理由は実は簡単なことだった。彼らが滅ぶ前にいち早く大企業病に気づき対処したからなのだ。言い換えると、自分達の周りの囲いに気づきその囲いを壊そうとした勇気と才能にあふれたコンドルのリーダーがいたからである。(2002/5/15)

 

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